第59回釧路地区母親大会

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講演の主な内容(※詳しくは、資料1~6をご覧ください。)

TPPが国会で批准されたことから、種子法が廃止され、林業や漁業、自治体が行っている水道事業への民間参入が認められ、海外企業も含めて入札できるようになりました。また、自治体が管理する野菜や魚の卸売市場にも企業参入ができる法律が次々に強行され、食料が企業に支配されようとしています。

食の安全基準についても緩和され、とりわけ今問題になっているラウンドアップ(除草剤)の主成分グリホサートは6倍から400倍も緩和されています。これは、輸入される小麦粉製品やワイン、ビールなどの多くに残留しているからです。グリホサートは国連保健機関(WHO)が発がん性を認め、アメリカ裁判所でも発がん性を認定、強い神経毒性があることから発達障害も指摘されています。

日本は世界最大の遺伝子組み換え食品を食べており、日本人が今まさに「人体実験」のさなかにあります。加えて、今年(2019年)からゲノム編集食品が出回ろうとしています。遺伝子研究は始まって間もなく、とったり付けたりすることによる影響は未解明です。そのためにも、遺伝子組み換えやゲノム編集技術を使った食品には、ヨーロッパのように表示を義務付けることが重要です。

次の資料は講演の内容をまとめたものです。クリックしてご覧ください。
  1. TPPがもたらした悪影響
  2. 種子法廃止は誰のため
  3. 世界で一番遺伝子組み換え食品を食べている私たち
  4. TPPによって変えられた安全基準
  5. 成長ホルモン、抗生物質、食品添加物は?
  6. 食の安全を守るためにも家族農業にこそ支援を

資料1.TPPがもたらした悪影響

TPPが国会で批准されてから、日本の制度で大きく変わったこと

  1. 主要農作物種子法が廃止され、これまで蓄積された品種開発や育種に関する知見を民間企業にほぼ無償の形で提供する法律が施行された。
  2. 森林管理法によって、民有林の伐採などが自治体の管理の下に民間企業が伐採できるようになった。
  3. 漁業への民間企業の参入。これまでは漁業権の管理を漁業者による海区調整委員が行ってきたが今度は海外企業も含めた入札になった。さらに、漁業権すらなくそうとする動きも出ている。
  4. 自治体が行っている水道事業への民間が認められ、海外企業も入札に参入できるようになった。
  5. 自治体が管理していた野菜や魚の卸売市場にも企業参入できる法律が強行され、東京の豊洲市場はその実践する市場となった。セリによる価格形成の場ではなく、大手量販企業の物流センターになった。

これらは、いのちをつなぐ重要な機能が企業によって支配されかねない状況になっている。いのちをつなぐ糧(カテ)が企業の儲けの道具となってしまった。

資料2.種子法廃止は誰のため

種子法は戦後の食糧難のとき、食料を確保するために用意しなければならない種までも、食べてしまったため、食料生産ができなくなった。そこで、いい種をよりやすく農業者に供給するために種子法が作られた。種子法(主要農作物種子法)のもとで、種子は、私たちの税金を有効活用しながら、国と都道府県による研究と開発、普及の蓄積によって作られてきた「公共の財産」である。この種子法を廃止して、種の供給を企業にゆだねることにした。これが、種子法の廃止である。

【企業に委託することによる恐ろしい影響】

  • 種子の価格が値上がり、変動するようになる。例えば、企業が開発した「みつひかり」はF1(交雑種)で、この種からとれたものは、種籾(タネモミ)にはならない。その価格は20kg当たり8万円で、「ななつぼし」や「ゆめぴりか」などに比べて10倍の価格。作物の価格引き上げにもつながる。アメリカでは遺伝子組み換えが急速に拡大。大豆、トウモロコシの種子価格が3~4倍に。野菜の種のほとんどは種子企業が開発しており、野菜の国内自給率は80%だが、種子の自給率は8%。すでに、国内の野菜生産そのものが、種子企業に支配されている。
  • 儲からない品種は切り捨てられ、品種の単一化が進む危険性。北海道には、これまでの在来種を含めた植物資源センターで多くの植物の遺伝資源を保存し、品種開発に生かしてきた。そこで保存されている遺伝資源は、農家の希望や関係機関の要望があれば、育種することができた。しかし、民間になれば、企業秘密として持ち出されないことになる。また、企業による品種の統一は、環境に対応できる種がなくなるということ。今までの技術である「公共の財産」を失うことになる。さらに、遺伝子組み替え種子のように農薬とセットで販売するため、そのための品種を開発することになる。
  • 特許「知的所有権」の問題。いま、北海道で作られている米や小麦、大豆には、育種権はあるが、特許権はない。この育種権が農業者による「自家増植」を禁止し、種子は必ず買わなければならいようにした。この北海道で開発した品種に、企業が若干手を加えれば特許権を有することが可能になる。特許権ができると、その品種を許可なく生産することはできないし、その品種と自然に交配してしまっても、違反になる。
  • 日本ではまだ遺伝子組み換え作物を販売目的に作付けすることは認められていないが、輸入はどんどん認めているので、企業が開発していくならば、ゲノム編集された作物も含めて、解禁になる可能性がある。世界で認可されている遺伝子組み換え品目は405種。厚生労働省および内閣府食品安全委員会によって、ジャガイモ、ダイズ、テンサイ、トウモロコシ、ナタネ、ワタ、アルファルファおよびパパイアの8作物318種類については平成30年2月23日現在、輸入されている。日本は世界最大の遺伝子組み換え開放国に。(2番目はアメリカで195、次いでカナダ171、メキシコ168、韓国149とアメリカとFTAを締結している国が上位を独占。

資料3.世界で一番遺伝子組み替え食品を食べている私たち

しょう油、味噌、砂糖、食用油の多くが遺伝子組み換え食品。味噌や納豆、豆腐には「遺伝子組み換えを使っていない」という表示ができるが、多くの加工品には表示の義務がない。しょう油や味噌の多くは、輸入大豆で、しかも、油を搾った残りカス。これは家畜の餌で、日本人は食べさせられている。

食用油の90%は、遺伝子組み換えの大豆、なたねなどから作られている。国内で消費されている食用油のほとんどは「ノマルヘキサン」という薬品を使った搾り方で、薬品を使って油分を取り出し、200度まで加熱して薬品をとばすやり方。大豆やなたね、トウモロコシなどの油はこの方法で搾油している。この方法だと圧搾よりも効率は高いが、薬品が残留される場合もあり、多くの食用油には消泡剤や乳化剤が使われているので、圧搾油で高温製油していないものを選ぶ方がよい。

砂糖は、65%が輸入。アメリカ産の遺伝子組み換えビートなどから作られている。砂糖の代替品として、コーンスターチやでん粉なども使われており、これらも遺伝子組み換えである。
いわゆる加工された甘味料でお菓子やジュース類など多くの加工食品に使用されている。コカコーラの甘みは、ブドウ糖果糖液糖。ほとんどが遺伝子組み換えトウモロコシからつくられるコーンスターチが原料。標準的な500mlだと、56.5g。コーヒーなどに使うスティックシュガー(3g)19本分になる。

遺伝子組み換えトウモロコシ

アメリカで糖尿病が多いことからコカコーラ「ゼロ」が発売された。その成分は「異性化糖」。トウモロコシやジャガイモ、サツマイモが原料。価格は砂糖の7割程度。清涼飲料やパン、缶詰、乳製品など大量に使用。低温でも甘み度が増すことから、冷菓に広く使われている。成分は人工甘味料のアスパルテームやスクラロース、アセルスファムKなどが使われている。アスパルテームはモンサント社が開発したもので、脳神経に影響をもたらし、頭痛、目まい、視力低下、白内障、動悸、吐き気、記憶喪失を引き起こし、脳卒中や糖尿病、腎臓病、脳腫瘍をもたらすという報告も出されている。スクラロースは消化しにくいことから、下痢症状が出やすく、遺伝子を傷つける「変異原性」の疑いもある。アセルスファムKはインスリン分泌を促すため、糖尿病患者には要注意の人工甘味料である。

遺伝子組み換え食品の安全性については、事実上私たち日本人は「人体実験」の最中にあり、アメリカ農務省は「日本人が世界で一番遺伝子組み換え食品を食べている」と報告している。輸入トウモロコシやジャガイモを原料にしたお菓子の多くから、遺伝子組み換えが検出されている。キシリトールなども多くが遺伝子組み換えトウモロコシのしんから作られている。

資料4.TPPによって変えられた安全基準

TPP

日本が輸入している大豆やトウモロコシは、遺伝子組み換えなので、ラウンドアップ(グリホサート)が大量に残留し、さらに、日本の港に入るとサイロに入れて、ネオニコチノイド系農薬で燻蒸されている。(※燻蒸(くんじょう)とは主に害虫駆除や防カビ・殺菌の目的で気体の薬剤を対象に浸透させる方法)

モンサント社から日本政府に提出された申請書(1996年2月)では、この新しい遺伝子組み換え大豆の栽培方法では従来の残留濃度基準を超える場合があるため、残留農薬基準の緩和を求めていた。モンサント社はアメリカ政府も動かして、当時の大豆のラウンドアップ農薬の残留基準6ppmを1999年10月1日付けの都道府県知事と政令市長、特別区区長あての厚労省局長通達で20ppmに引き上げた。アメリカでは1ppmだったのが50ppmまで引き上げられた。

日本で発達障害が増加している一つの要因として、遺伝子組み換え食品は、種の異なる遺伝子や抗生物質の影響とともに、国連保健機関が認定する発がん物質のグリホサートの懸念もある。さらに、ラウンドアップに添加されている合成界面活性剤は変死者を引き起こすと、筑波大学の教授が指摘している。植物は脂分で覆われていて、葉っぱの水分などを水滴にして下に落ちるようにしているが、合成界面活性剤は植物の中に農薬が入り込むようにするために使われるので、植物の体内に取り込まれると、根から枯らしてしまう。ネオニコチノイド系農薬は、知的発達障害や多動性などの神経を壊す農薬であり、ヨーロッパなどではどんどん使用禁止措置が取られている。

遺伝子組み換えは魚や豚にも行われ、すでにアメリカ政府は皮をむいても変色しない遺伝子組み換えリンゴ、鮭にウナギの一種の遺伝子組み込んで、キングサーモンの2倍の大きさの遺伝子組み換え鮭を認可した。100%果汁といっている濃縮還元ジュースはビタミンも香りも飛んでいるので、ビタミンや香料、クエン酸などを添加している。ほかに、米、小麦、ピンク色のパイナップル、ベータカロチンが多いニンジン色のバナナなどを開発中で、それを支援しているのがモンサントとビル・ゲイツ財団である。農薬企業のデュポンはゲノム操作した小麦を開発中。「遺伝子組み換えでない」という遺伝子組み換え表示が、これまでの5%混入から「不検出」となった。日本の表示は加工度の高い、食用油、マーガリン、マヨネーズや甘味料などに加え、遺伝子組み換えのエサを給与した食肉や乳製品は表示の対象から除外されている。

また、遺伝子の一部を削除するというゲノム編集した食品を表示の対象から除外することを環境省が決めた。ゲノム編集は、命のバランスを崩し、突然変異を作り出すもの。安倍政権がすすめる高度技術の一環として開発されている。日本では、国の機関がゲノム編集の米を開発しており、北大とパナソニックが大豆の開発をしている。今年(2019年)8月から、表示もされず、ゲノム編集食品が流通されかねない事態。命あるものを短期的な利益のために分解した技術には、必ずしっぺ返しがくるだろう。

遺伝子組み換え技術は、別の生物の遺伝子を入れることによって、農薬や害虫に強い品種をつくる方法である。ゲノム編集技術とは、特定の遺伝子を切断して、その遺伝子の動きをとめる遺伝子を操作する新しい技術。2018年12月30日にはTPP11が発効され、2019年2月には日欧EPAも発効。農畜産物も加工食品も無関税で輸入される。ワインが安くなったが、輸入ワインやビール、果汁などから、農薬ラウンドアップの主成分グリホサートが検出されている。原因は果樹園に除草剤のラウンドアップをまいて、雑草をなくしているから。フランスやチリなどのワインからも、オランダのハイネケン、アメリカのバドワイザー、中国の青島ビールからも確実に検出されている。

【グリホサートの残留基準】

TPP調印後の2017年12月に大幅に緩和

  • トウモロコシ(1ppm~5ppm)
  • 小麦(5ppm~30ppm)
  • なたね(0.1ppm~30ppm)
  • そば(0.1ppm~30ppm)
  • ひまわり(0.1ppm~40ppm)
  • ビート(0・2ppm~15ppm)

小麦は国が輸入して、製粉業界に売り渡す仕組みになっている。カナダ産小麦を使ったほとんどのパンや、業務用の生ラーメンは表示がないので、グリホサート入りラーメンとなっている。
北米では、小麦にラウンドアップを散布してから収穫した方が効率があがるとして、多く使われている。カナダ産小麦は主に、パンの原料に、アメリカ産小麦は、ラーメンやお菓子の原料に。農水省も北米産小麦にグリホサートが残留していることを認めているが、緩和された基準内であるので問題なしとして製粉業界に売り渡している。小麦は国が輸入して、製粉業界に売り渡す仕組みになっている。カナダ産小麦を使ったほとんどのパンや、業務用の生ラーメンには表示もない。

グリホサートは、国連保健機関の国際がん研究機構が「人に対しておそらく発ガン性がある」と結論づけている。また、アメリカのカリフォルニア裁判所が、ラウンドアップを使ってガンになったとして、2億9千万ドルの賠償をモンサント社(バイエル)に命ずる判決を出している。ヨーロッパでは、発ガン性に加え、神経毒性による発達障害(自閉症、注意欠如多動性障害、学習障害)認知症、パーキンソン病、自己免疫疾患などを引き起こすとして、使用を控える動きが広がっている。

いま、FTA・日米貿易交渉が大詰めを迎えている。政府は、盛んに交渉しているかのポーズを取っているが、実は農産物についてはほとんど開放することにして、その見返りとして自動車関税25%を下げてもらおうとしているだけ。
また、日本政府は交渉に入る前から、食品安全委員会に、アメリカ産牛肉の月齢制限の撤廃を答申し、どんな牛肉でも輸入しようとしている。

同時に、ポストハーベスト農薬の基準も緩和、ネオニコチノイド系農薬基準も緩和、遺伝子組み替え食品を世界で最も食べている日本が、有機リン系農薬もネオニコ農薬も世界で一番人体に取り込むことになりかねない。ネオニコチノイド系農薬とは、有機リン系に代わる農薬として、1990年代に開発された殺虫剤で、新しいニコチンという意味。その宣伝文句は「虫に良く効くが、人には安全。無臭・無色で環境保全型である」というもの。しかし、実際には、水に溶けやすく、散布されると根、葉、茎、果実に浸透し、残留すると洗っても落ちない、地中に長期に残留し、河川も汚染する。さらに、神経伝達を攪乱(カクラン)する神経毒性がある。日本でもミツバチの大量死が相次いで報告されたが、その主原因であることが判明。

生物多様性への破壊的影響をもたらし、他の殺菌剤とあわせて使用すると数百倍から千倍に増幅するという報告も出されている。海外では規制が厳しくなっているが、日本では逆に緩和され、ほうれん草では、3ppmから40PPMに、レタスは5ppmから10PPMになっている。発達障害の急増は、遺伝要因よりも環境要因が大きいことがわかってきている。国内の3歳児の尿から、ネオニコチノイド系農薬が79.8%も検出されたという報告もあり、深刻な問題となっている。

ネオニコチノイド系農薬の消費量が最も多い都道府県は、東京都。農業用として使うよりも、シロアリ駆除や建築資材、スプレー殺虫剤、ゴルフ場などに多く使われている。殺虫スプレーをかければ、虫は来ないが、毒は寄せてしまうことになるし、健康のためにとゴルフに行けば、神経毒を取り込んでしまうことになる。

資料5.成長ホルモン、抗生物質、食品添加物は?

TPP11や日欧EPAが発効して約半年、4月からは2年目となり、関税がさらに下がり、牛肉や豚肉、乳製品の輸入が急増。牛に成長ホルモン剤を与えているのはアメリカだけではない。

合成ホルモン剤は、モンサントが遺伝子組み換え技術を使って開発した薬で、世界中に広がっている。このホルモン剤を子牛に注射すると成長が早まり、搾乳牛に注射すると牛乳を多く出す。このホルモン剤を使った牛肉や乳製品を私たちが食べた場合、成長ホルモンなので子どもたちは成長が早まる。細胞分裂を活性化させるので、刺激を一番受ける細胞つまり、細胞分裂が活発なガン細胞で、ガンの促進作用があると指摘されている。日本は成長ホルモン剤の使用を規制しているが、日米FTAでこの規制が緩和されかねない。

抗生物質も成長促進の目的で使われている。抗生物質を投与すると、腸内細菌を殺すので、エサを食べたときに、その栄養をバクテリアを養うために使われず、牛が吸収するので成長が促進されるという考え。抗生物質の大きな問題は、耐性菌であるということ。アメリカでは、病院で使う抗生物質も含め全体の8割が家畜に使われている。抗生物質がたくさん使われると、抗生物質が効かない耐性菌が増える。耐性菌がある牛肉や乳製品を食べると、病院に行った時に治療法が失われてしまう可能性が出る。日本では、医薬品としての抗生物質を家畜にはやらないことになっているが、その範囲が広がる危険性もある。

アメリカでは約6割の牛が、大腸菌O-157に汚染されている。そのために、ハンバーガー用の牛肉はオーストラリアから輸入していた。つけ加えると7割の牛がオーネ病にかかっている。さらに抗生物質耐性菌の汚染問題に対処するために、細菌を殺す目的で、牛肉に放射線照射が認められている。日本ではジャガイモにしか認められていないので、放射線照射した食肉は輸入しないことになっているが、これも緩和の可能性がある。すでに、牛レバー刺への放射線照射を容認する方向で検討を始めている。

食品添加物

食品添加物である塩漬け製品からフェロシアン化合物が日本で見つかった。日本では許可されていない。廃棄するのかと思ったら、厚労省は欧米で一般的に使われているとして認可した。塩は水分を含むとベトベトになることから、サラサラの状態を維持するための添加物として使われていたのがフェロシアン化合物。この添加物がなぜ問題かというと、シアンが使われていること。

シアンは猛毒物質で、青酸カリとか青酸ソーダの化合物。フェロシアン化合物も化学変化を起こすと、猛毒物質になる可能性があるということで、日本では認可してこなかった。日本は、食品の輸入だけでなく、食品添加物の輸入も急増している。

例えば、ビタミンCとかビタミンB1などいろいろあって、病院でもビタミン剤を使っているが、国産は一つもなく、ほとんどが中国からの輸入。その製造方法も分からず、多く含まれている不純物の内容も明かされていない。食品添加物には、不純物も含まれており、しかも、単体ではなく、複合されたものが販売されており、今では食品添加物アレルギーも出ている。日本はアメリカの要望を聞き入れて、農薬も食品添加物に加えた。主に柑橘類に使われてる中身を守るためにコーティングする防腐・防かび農薬を添加物にしてしまった。だから、アメリカのグレープフルーツやレモンなどは、お店で買ってから半年は日持ちする。日本では、食品添加物を使うと、食品に使った添加物を表示しなければならないが、この表示が輸出の邪魔になっているとして、その表示撤廃も求めている。

日本は残留の規制を、リストにない農薬が規制の対象から除外させないように、全ての農薬に一律(0.01ppm)の残留基準が適用されるポジティブ制度をとっている。アメリカは、イチゴやサクランボにもポストハーベスト農薬を使っているので、日本のポジティブリスト制度(基準が設定されていない農薬等が一定量以上含まれている食品の流通を原則禁止する制度)を止めるよう求めている。
遺伝子組み替えもゲノム編集も、農薬や食品添加物の表示のない国になる危険性がある。日米FTA交渉では、アメリカ産に限って原産国表示もなくす可能性すらある。とりわけ、2020年の東京オリンピック後は深刻な事態になることが想定される。アメリカには、食品に異物が混入されてもいいという、異物基準がある。

アメリカ食品異物規準よると、

  • マッシュルームの缶詰には、100g当たりウジ虫20匹まで
  • レーズンは、227g当たりハエの卵35個まで
  • トマトの缶詰500gに、ウジ虫2匹まで
  • トマトピューレ100gに、ハエの卵20個まで
  • トマトジュース100gに、ハエの卵10個まで
  • 柑橘(ミカンなど)ジュース250mlにハエの卵5個、ウジ虫1匹、カビ10%
  • 冷凍イチゴは45%がカビていても大丈夫
  • サクランボジャムは35%カビていても大丈夫
  • マカロニは225g当たりネズミの毛が4.5本まで大丈夫

という内容になっている。

資料6.食の安全守るためにも家族農業にこそ支援を

日本は年間77万㌧の米を輸入している。そのうち約半分がアメリカ産。輸入米のうち10万㌧は主食用として入札されている。勿論、お店やスーパーではほとんど売られていない。それは、販売するとなると「アメリカ産」などと表示しなければならないからである。では輸入米はどこに行くのかというと、ほとんどが牛丼と回転寿司のチェーン店。アメリカ産米が何故問題なのかというとヒ素が混入していること。

アメリカで乳児の病気の原因を調べたら、乳児用粉ミルクからヒ素が検出されて大問題となった。乳児用粉ミルクには、乳製品だけでなく、栄養を豊かにするために、穀物の粉も入れており、その原料の米粉にヒ素が含まれていたからである。そのために、ヒ素入りの米は敬遠され、その売れないヒ素入り米は日本に輸出するようになった。だから、回転寿司などで外食をしようとすることは、体に害になる、害食になりかねない。

今年はオーストラリアから8千㌧の米の輸入が拡大される。そのために、政府は、国産米を8千㌧備蓄米として買い上げることにしている。つまり、オーストラリアからの輸入米は皆さんに食べてもらって、国産米は最終的に家畜のエサにするというもの。すでに、オーストラリア産米「オーパス」を目玉にする外食店も現れている。

日本の食品産業の産出額は1980年には約50兆円だったが、現在は約100兆円の規模になっている。しかし、農業産出額は13兆円から10兆円に下落しており、農産物は買いたたかれているのが実態。農業所得を時給に換算するとお米で480円、野菜は600円程度にしかならない。カナダの牛乳は1リットルあたり300円と日本より高い価格。しかし、カナダの消費者は「アメリカ産の遺伝子組み換え成長ホルモン入りの牛乳は不安。カナダ産を支えたい」と述べている。

また、スイス産の卵は1個60円以上するが、それでも国産の卵が売れているそうで、その理由を小学生の女の子は「これを買うことで生産者の皆さんの生活を支えられ、そのおかげで私たちの生活も成り立つ。だから当たり前でしょう」と答えているそうだ。イタリアでは、オタマジャクシが棲める生物多様性、ダムの変わりに貯水できる洪水防止機能、水を濾過してくれる機能を持つ水田に、米の値段は反映される、ただ乗りしてはいけないと、直接支払を行っている。

スイスの環境支払は、細かく分類されており、養豚の場合は、豚の食事場所と寝床を区分して、自由に外に出て行けるように飼うと230万円出る。安倍政権は、輸出農業、AI・スマート農業といいながら、こうした環境保全型農業とは逆行する方向に政府が莫大なお金を出して進めようとしている。これでは、国内産といえども、どうなのかと言われかねない。
※「環境支払」とは、農業を通して自然環境を守っている農家の営みを新しい方法で評価して、その対価を国民全体で負担し、応援をする制度のこと。

家族農家

釧路、根室地域は酪農の主産地だが、規模拡大が進み、ふん尿処理のために多額の投資や草地改良などに多くの税金を使っている。そうではなくて、ふん尿が余らないような牛飼いを行えば、処理のために税金を使う必要はない。また、大量のラウンドアップを使って、雑草をことごとく死滅させ、土壌に必要な微生物までも根こそぎ死滅させるような草地改良をしなくてもよい。しかも、土壌に残留し、河川にも流れていく。実は、お金を使った土壌改悪をしている。

国連は2019年からの10年間を「家族農業の10年」として、持続可能で、生物多様性を確保し、環境を守りかつ安全な食料を生産できる家族農業の優位性を訴え、各国政府に家族農業への支援を求めている。輸出農業や?マークのつく「効率」優先の企業経営から、家族農業に切り替えることによって、環境も食の安全も守る方向に転換していかなければならない。

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