第61回釧路地区母親大会

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北海道教育大学釧路校の教授 小野川文子先生のご協力で、久しぶりのリアル開催を実施することができました。講演は障がいのあるなしに関わらず、あらゆる子どもたちが育つ環境、保護者を取り巻く社会についてお話していただきました。

不登校が急増した!それも小学校に

  • 不登校の実態について、過去最高となったことやいじめは減少したが、2022年には再び急増し、自殺は2021年の368名から、2022年の512名と過去最高となった。ここで、注目すべきことは小学校が増えているということ。
  • 背景には、本人に問題があるようにとらえがちであるけれども学校にいたくない現状があるのではないか、安全安心が守られていないのではないか。
  • 今まで、本人の資質や家庭の問題が不登校に関わっているのではないかと思われてきたが不登校対策をしてもいっこうに解決されないことから、どんなにベターな家庭に育っていようが学力的に問題がなくても起こりうるんだという風に見方が変わってきた。(文科省の調査で)
  • 不登校が増えた原因として、平成19年の学テの実施が影響しているのではないか。
  • 61th
  • 学力向上のため、授業を統一するスタンダードなやり方が学校に下りてきたとき、どんどん若い先生が増えてくる時代の中で受け入れられていった。10年間でみていくと、中学生は1.5倍。小学生は3.3倍に不登校は増えた。(右図参照)
  • 不登校の背景に発達障害~発達障害の特徴には大きく分けて2つある。
    1. 社会的コミュニケーションの障害
    2. 限局された反復的な行動(こだわり)
    3. 集団生活では非常に生きづらい。初期の段階でつまずいてしまう。
  • 大学生になって現れてくるときがある。
  • ワーキングメモリが小さい。(短期記憶、作動記憶が困難) 
  • プランニングができない。
  • 処理のしかたに得意、不得意がある。
  • 61th
    • 児童虐待は増えています。(右図参照)虐待が子どもの発達に及ぼす影響~身体への影響、脳への影響、心への影響
    1. 身体への影響~身体が小さい、暴力等による怪我、命の危険
    2. 脳への影響~前頭前野の働き・・・予測や推論したり感情や理性をつかさどるところなので、想像力の困難。言葉の意味が取れないなど。脳梁の働き・・・左脳と右脳をつなぐ橋。別々に働くことで感情と言葉の意味がバラバラになることも。虐待を受けると発達障害と似た症状が現れる。
    3. 心の影響~愛着障害・・・安全基地がないため困難に立ち向かえない。SOSが出せない。感情が未分化。絶望感。自信がない。人間関係がうまく築けないなど。
  • 通常学校では子どものからだがおかしい~「睡眠障害」「アレルギー」「すぐ疲れたという」
  • 2015年はアレルギーがトップだったが、2022年はじっとしていない。ゲーム依存。背中がぐにゃぐにゃ。夜寝られないが上位を占めている。前頭葉機能、自律神経失調症機能、睡眠・覚醒機能など“神経系”の問題。
    これらの問題は前頭葉の問題で被虐待児と同じ身体症状を呈している。家庭の問題ではなく、社会的な問題が脳に影響を与えている。障害と疑う前に育ちの問題を考えるとよい。
  • 1997年「児童福祉法」改正:措置から申請、保護から自立支援へ。
    2006年「障害者自立支援法」制定⇒2012年「障害者総合支援」法:措置制度から支援費制度へ(契約)・・・子育ては「家族の責任」がますます強化。自助、共助、公助の中で自助が強調された。
    「自立」「自立支援」とは誰にも頼らないで一人でできることではなく、「依存先を増やすこと」。
  • 安心して暮らせる社会を!
    • 1人ではなくみんなとつながる
    • 依存先をたくさんつくる、依存先がたくさんある地域をつくる
    • 人としての権利が尊重される教育は「人材育成」ではなく「人格の完成」
    • 女性、子ども、障害者、高齢者に優しい社会は全ての人にやさしい社会である。

参加者の感想

  • 小野川先生のおはなしはとても分かりやすく、子どもたちの実情や社会的問題を知ることができ、とても勉強になりました。ありがとうございました。
  • 子どもの不登校過去最高、文科省は学力向上に力を入れる?北海道は学力が低い?90日以上の不登校が増えていること。発達障がいの子ども 6.5%~8.8%と大幅な増加とのこと、児童虐待も増えていること。 ”自立”とは、依存先を増やすこと。誰でも頼らない、、一人で生きていけるように支援すること?ではない。安心して暮らせる社会が必要。
  • 小野川先生ご自身も苦労されて子育て、お仕事されていたということで、とても説得力のあるお話と感じました。「依存先を増やす」という視点が広がっていくように何かできないかなと思っています。
    今、子どもたちを見ていると、友達と関わる力、コミニュケーションの力は年々不足してきているなと思います。コロナだけではないけれど、コロナで距離を取る、静かに食事など、求められてきたことがやはり影響しているのではと感じます。不足した経験をどこでどうやって補っていくか・・・・・と思います。
  • 困ったとき相談できる依存先がある。大事なことですね。たくさん作っている。又、持っていることが大事。
  • 教育は「人格の形成」である。その通りです。教員の権利が尊重され、認められなければならない!子どもの人格形成はできないと思いました。子どもの学習権、充実は守られなければならないと思います。やはり、それには教員をきちんと配置しなければならない。非正規雇用では子どもも先生も安心して実践できない。
  • 自立という言葉にいろいろ思いを寄せました。これからの女性は自立しなければならないとか、人に迷惑をかけてはいけないとか、自分がしっかりしなければ そう言われ続けてきたような気がする。もっともっと人とのかかわりを大切にし、助け合えることの大切さを基本にしたいと思いました。
  • 「子どもの育ちが危ない」の詳しい中味がよくわかりました。また、障がい児の居る施設で働いていました。親の大変さを感じたことを思い出しながら聞いていました。この話は障がい児教育に関わっている人に聞いてほしいと思いました。また、学校のPTAの講演を是非して下さい。 教員が非正規なんてとんでもないことですよね。もっと子どもに、おしてそれに係る人にお金を使ってほしいです。軍事費は増やしてほしくない。
  • 言葉のはぎれがよいので素直に頭に入ってきました。現在の子ども事情が良くわかりました。障がい者の生きづらさの解釈解決を考える必要性。
  • 「自立」とは、依存先を増やすこととは、日常的に自分の存在を周りに見せる事が依存性を増やす第一歩と思う。
  • 子ども達は未来の日本の国の方向を決める大切な宝です。より良い環境で育てられ、国際的に熱い信頼を得られるような国をめざし、努力して頂きたいです。その為に私たちに今何が出来るか考え、努力していきたいと思います。
  • 小野川先生のお話では、子どもの資質は同一のものではなく、子どもの実態は多種多様。その実態に即し、学問的な観点からの環境で育っていくことが大切とお聞きしました。国は大切な子ども達の福祉に重点を置いた政策に力を尽くすべき、幼児教育から大学まで、国が予算をたくさんつけていくべき。軍備等に力を入れる時ではない。
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